プレスリリース

イオン液体に参入 合成販売、受託合成、 アルミニウム空気電池の二次電池化の検討やセルロースナノファイバーの溶解、リチウムイオン電池の電解液などにも応用

2019.07.18

ポイント

1. 自社でイオン液体を合成、イオン液体の受託合成も開始

2. イオン液体を開発中のアルミニウム―空気電池の電解液として用いて二次電池化の使用検討

3. イオン液体をセルロースナノファイバーの溶解に使用検討

4. イオン液体をリチウムイオン電池の電解液に検討

5. イオン液体をカーボンナノチューブ分散体、カーボンナノチューブゲルに応用検討

6. その他、帯電防止剤、電解液、潤滑剤、色材インクなどに応用検討

概要

兵庫県川西市に本社を置く中小化学メーカーである冨士色素株式会社(創業昭和13年、従業員約80人)は、イオン液体の合成を始めました。自社で研究開発、合成、製造することにより、同社で開発中のアルミニウム―空気電池の二次電池化、セルロースナノファイバーの溶解、分散検討、リチウムイオン電池の電解液としての検討、カーボンナノチューブ分散体、カーボンナノチューブゲルに、他にも帯電防止剤、電解液、湿潤剤、色材インクの添加剤などとして使用検討を進めます。

背景

イオン液体とはイオンのみで構成された100℃以下で液体の塩とされている新素材です。カチオンとアニオンの組み合わせで、無数の様々な物質、物性を作り出すことができるので、デザイナーソルベント、また水、有機溶剤に続く第三の液体ともいわれています。イオン液体の特徴として、広い温度範囲で液体であるので高温及び低温領域において使用可能、また熱的、化学的、電気化学的にも安定で、蒸気圧も低く真空下などの過酷な環境下での使用も可能となります。イオン液体は難燃性材料です。また電気が流れる導電性液体なので、電気化学デバイスや帯電防止用途でも応用が期待できます。さらにセルロースなどの難溶性物質も溶解することもでき、このような性質を元に様々な応用が期待できる新素材です。

イオン液体の用途

1. 金属―空気電池、アルミニウム―空気電池の二次電池化
弊社で開発中のアルミニウム―空気電池において、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドや1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドなどを用いると金属負極側に副産物である酸化アルミニウムや水酸化アルミニウムが析出しなくなり、二次電池化が可能になることがわかっています。弊社では、自社でこのイオン液体を合成し、アルミニウム―空気電池の二次電池の実用化を目指しています。

2. セルロース、セルロースナノファイバーの溶解
イオン液体は難溶性物質を溶解する溶媒で、セルロースなどの難溶性物質も溶解することができます。セルロース再生時の重合度維持性能に優れ、セルロースの特性を損ないません。これによりセルロース、セルロースナノファイバーからの再生セルロースの繊維、シートの製造などに応用できる可能性があります。

3. リチウムイオン電池、各種電池の電解液としての検討
電解質に要求される物性は高い電気伝導率、高い分解電圧、大きい電気二重層容量、広い使用温度範囲、安全性などですが、イオン液体はこの要求に対応できる可能性を持っており、電気二重層キャパシタ(EDLC)、リチウムイオン電池(LIB)、色素増感太陽電池(DSSC)、燃料電池などの各種電気化学デバイスへの応用が期待されています。イオン液体は現行のエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート系の電解液と比較して、電池特性が向上することが期待されています。また、難燃性なので現在よく問題になっているリチウムイオン電池の引火性が改善され、さらに高温でも使用できるリチウムイオン電池が作れる可能性があります。

4. カーボンナノチューブ分散体、カーボンナノチューブゲルに応用
カーボンナノチューブは通常樹脂などと相溶性が悪く混合しないのですが、イオン液体に分散、混合などをすると、良好な分散体、ゲル化、そして高い導電性を有して樹脂に練りこんだりすることができるようになります。またイオン液体とカーボンナノチューブを混合しただけのカーボンナノチューブゲルは非常に興味深い特性を示します。
5. 帯電防止剤
樹脂などに添加することにより帯電防止剤として使用することができます。 不揮発性であり耐熱性が高いことから、高温プロセスが必要とされる工程で使用することが可能となり、樹脂の透明性を維持しながら、少量添加で優れた帯電防止能を有する可能性があります。耐熱性にも優れ、ポリカーボネート等の樹脂、建材用塗料、UVハードコート剤、粘着剤などへ練りこみして帯電防止用途としても期待されています。
6. 合成用途としての反応溶媒
近年化学工業界においては、臭いなどの強い有機溶剤を使用する合成方法のカラ理に、環境に優しいクリーンプロセスの開発が急務となっており、イオン液体は、このようなグリーンケミストリーの分野で注目を集めています。イオン液体は、蒸気圧をほとんど持たず、不揮発性、難燃性であるため安全で、かつ加熱処理や分液処理による分離操作によってその再利用が容易であるため、環境中への拡散を抑えることができ、かつ取り扱いを非常に簡単にすることができます。

そのほかにも、CO2吸収剤、真空下でも使用できる潤滑剤、色材製品の添加剤などに応用できるなど非常に多くの可能性をもった新素材です。

イオン液体の化学組成と弊社の取り組み
イオン液体は、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオンなどの有機カチオンと臭化物、フッ化物、塩化物などのアニオンから成る塩で、比較的低温で液体状態となり、無数の合成の組み合わせがあります。弊社では種々あるイオン性液体のうち、カチオンはイミダゾリウム系などを用いて、一方アニオンは、塩素、臭素系イオンを合成原料に用いていますが、今後さらに種類を増やしていきます。また様々なイオン液体の受託合成も始めています。