プレスリリース

太陽電池、バイオイメージングなどの医療用途向け シリコン量子ドットの世界初の大量生産方法を確立

2019.07.17

ポイント

1. 太陽電池、バイオ、医学用途にも応用できる安全で毒性のないシリコン量子ドットの大量生産方法を確立

2. シリコン量子ドットを大量生産できるようにしたのは世界初である

3. 他の量子ドット材料であるCd, Se, Pbなどの元素と比較して安全な元素であるシリコンを原料とする量子ドット材料

概要

兵庫県川西市に本社を置く中小化学メーカーである冨士色素株式会社(創業昭和13年、従業員約85人、代表取締役社長 森 良平)の森 良平博士は、太陽電池やバイオイメージングなどの医療、医学用途に応用できるシリコン量子ドットの大量生産方法を確立しました。量子ドットにおいては数多くの作製方法が報告されていますが、いずれもCVD、プラズマ法や電子リソグラフィーなどの高価な方法や、強い酸を使ったり合成手法にコストや時間がかかったりするためより迅速、簡便な方法が求められていました。この点において、特にシリコン量子ドットの大量生産方法を確立し、商業ベースのビジネスに展開できるようにしたことは世界初です。

量子ドット(Quantum Dot) とは、量子化学、量子力学に従う独特な光学特性を持つナノスケールの半導体結晶のことを指す最先端材料です。原子、分子数が10 – 1000個と言われる超微細構造を有しており、数Å~数十nmの大きさを持つ単一元素、化合物半導体や酸化物半導体の微粒子で、人口原子、分子とも言われています。コロイドナノ結晶のサイズによってバンドギャップを調節することが可能であるため、粒径に依存した特徴的な発光特性を持ちます。基本的に、量子ドットは溶液(水、各種有機溶媒)に分散している状態ですので、低コストのプリント技術やコーティング技術を用いることが可能です。量子ドットの発色が明るく 鮮やかであることに加えて、広範囲の波長の光を発光可能で、かつ高効率、長寿命であるために、下に示すように様々な用途で応用が期待されています。

1. 太陽電池
2. ディスプレイ
3. セキュリティタグ、セキュリティインク、偽造防止
4. 量子ドットレーザー
5. 量子ドットトランジスタ
6. フォトニック結晶
7. 生体イメージング、バイオマーカー、医療画像装置(がん細胞のイメージング、たんぱく質の分析、細胞の追跡など)
8. LEDを含めた照明
9. 高密度固体メモリー
10. 熱電材料
11. 量子コンピューター
12. 光触媒
13. 人工光合成

商業ベースとして量子ドットを研究開発、製造している企業は世界でもまだ数が少なく、それらの製品を含め一般的な量子ドットはカドミウムを用いた半導体ですが、多くの用途でこれら重金属の使用は規制されています。そのためカドミウムの含まれていない量子ドットの開発が進められています。冨士色素株式会社はこのカドミウム含有量子ドットを含め、 カドミウムを含まない量子ドットとしてZnS、InP/ZnS、CuInS2、CuInSe2、CuInS2/ZnS、PbS、AgSなどの商品をそろえています。しかしながら、これらの元素を用いた量子ドットにおいても、バイオイメージング応用(バイオイメージ画像化、タンパク質分析、細胞のトラッキングなどへの応用化)に用いることができるようにするにはより安全な材料が必要となります。冨士色素株式会社にはカーボン量子ドット、グラフェン量子ドットなどの炭素系量子ドットもあり、これらの量子ドットはその安全性から医療用途へ応用できます。しかし太陽電池の変換効率向上の可能性をより有するシリコン量子ドットの開発はまだでした。シリコン量子ドットは太陽電池、医学用途以外にも量子ドットトランジスタ、シリコンフォトニクス、LED、量子ドットコンピューターなどへの応用が検討されています。
今回、冨士色素株式会社はこれらのシリコン量子ドットの大量合成技術を確立し、商業ベースでのビジネスを可能としました。シリコン量子ドットにおいて、大量生産商業ベースでの技術を確立したのは世界初です。現在、シリコン量子ドットの量子収率は約30%でさらなる向上を目指しています。

ブラックライト下でのシリコン量子ドットの発光

 

シリコン量子ドットの励起波長に依存した発光スペクトル

 

◆ 量子ドット

原子、分子数が10 – 1000個と言われる超微細構造を有しており、数Å~数十nmの大きさを持つ単一元素、化合物半導体や酸化物半導体の微粒子で、人口原子、分子とも言われています。そのサイズに基づいた特異的な性質を示し、物質の分子状態としての挙動とバルクとしての挙動の中間の状態の挙動を示すという点で非常に興味深い材料です。エネルギー準位、バンドギャップ、伝導帯、 価電子帯といった概念は、通常のバルクサイズの半導体の概念がそのままあてはまりますが、一つ大きな違いがあります。バルク状態では、半導体結晶の粒径は、ボーア半径よりも大幅に大きくなり、励起子は自然限界にまで及びます。しかし、 半導体結晶が小さくなると、物質のボーア半径のサイズにまで近づき、電子エネルギー準位はもはや連続ではなくなり、離れ離れになって行き、つまりエネルギー準位同士の間に小さな分離が生じます。この分離したエネルギー準位の状態は、量子封じ込めと呼ばれ、この状態では、半導体物質はバルクではなくなり 量子ドット と呼ばれる状態になります。

今後の予定

シリコン量子ドットの太陽電池への変換効率向上を検討していく予定です。また今回のシリコン量子ドットの溶媒は主に水ですが、有機溶剤系のシリコン量子ドットも検討します。引き続き量子収率の向上に努め、また今後はCu、Ag、Ni、Mo系などのその他の量子ドット、量子ロッドの研究開発、製造販売の検討を進めていく予定です。