プレスリリース

ペロブスカイト型量子ドットの大量生産方法を確立

2019.07.18

ポイント

1. 発光スペクトルの半値幅の狭いペロブスカイト型量子ドットの大量生産方法を確立

2. 発光スペクトルの半値幅が狭いので、他の量子ドットと比較してより鮮明な色を出せるディスプレイ用途に応用できる

概要

兵庫県川西市に本社を置く中小化学企業である冨士色素株式会社は、ペロブスカイト型量子ドットの大量生産方法を確立しました。量子ドットの中でも特にペロブスカイト型量子ドットは最先端の材料であり、本質的に発光スペクトルの半値幅が狭いという特徴があります。この特性により、他の量子ドットと比較して、より鮮明な色を出せるディスプレイ用途に応用できる可能性があります。このペロブスカイト型量子ドットを商業ベースのビジネスに展開できるようにしている企業は世界初か2番目と思われます。

研究内容

量子ドット(Quantum Dot) とは、量子化学、量子力学に従う独特な光学特性を持つナノスケールの半導体結晶であり、超微細な最先端材料です。原子、分子数が10 – 1000個と言われる超微細構造を有しており、通常1 – 10nmの直径というものすごく小さい構造体で、人口原子とも言われています。コロイドナノ結晶のサイズによってバンドギャップを調節することが可能であるため、粒径に依存した特徴的な発光特性を持ちます。量子ドットは、単に発光波長が調整可能で、固体の蛍光体と比較してスペクトルの半値幅が狭いというだけでなく、高い量子効率を持ち、また一方で幅広い波長を吸収することができます。基本的に、量子ドットは溶液(水、各種有機溶媒)に分散している状態ですので、低コストのプリント技術やコーティング技術を用いることが可能です。量子ドットの発色が明るく 鮮やかであることに加えて、広範囲の波長の光を発光可能で、かつ高効率、長寿命、高い減衰係数であるために、下に示すように様々な用途で応用が期待されています。

1. ディスプレイ
2. 太陽電池
3. 生体イメージング、バイオマーカー、医療画像装置(がん細胞のイメージング、たんぱく質の分析、細胞の追跡など)
4. セキュリティタグ、セキュリティインク、偽造防止
5. 量子ドットレーザー
6. トランジスタ
7. フォトニック結晶
8. LEDを含めた照明
9. 高密度固体メモリー
10. 熱電材料
11. 人口光合成
12. 量子コンピューター

商業ベースとして量子ドットを研究開発、製造している企業は世界でもまだ数が少なく、それらの製品を含め一般的な量子ドットはカドミウムを用いた半導体ですが、多くの用途でこれら重金属の使用は規制されています。そのためカドミウムの含まれていない量子ドットの開発が進められています。冨士色素株式会社はこのカドミウム含有量子ドットを含め、 カドミウムを含まない量子ドットとしてZnS、InP/ZnS、CdS、CdSe、CuInS2、CuInSe2、CuInS2/ZnS、PbS、AgInS2などの商品をそろえています。また炭素量子ドット、グラフェン量子ドット、シリコン量子ドットなど量子ドットに関しては新規事業としてかなり注力しております。また、各種量子ドットの受託合成も行っています。一方で、CdSe/ZnSやInP/ZnS量子ドットが主に海外でディスプレイ用途に少しずつ実用化され始めていますが、Cdの強い毒性、Inの希少性が問題になっています。またInP/ZnSにおいてはO2やH2Oを完全に遮断した環境下での合成が必要とされ、InPの化学的安定性、耐久性などの課題がまだ残っています。このような観点から弊社においてペロブスカイト型量子ドットを作成しました。CH3NH3PbX3 (Green)、CsPbX3(X=Cl, Br, I) (Blue, Red) が代表的な組成となっています。量子収率は約50 – 80%です。半値幅は18 nm – 39 nmあたりと非常に狭いものができています。発光波長が調整可能で、発光スペクトルの半値幅が狭い特性があるため、有機EL、レーザー、LED、ディスプレイなどの領域で大きな潜在能力があります。ベースとなる溶剤は各種検討中ですが、トルエン、ヘキサンが主となっています。なお鉛(Pb)無しのペロブスカイト型量子ドットは、量子収率の低下や半値幅が大きくなるなど特性が低下しますので現在まだ開発中です。

 

ブラックライト下でのペロブスカイト型量子ドットの発光

420 nm の波長の励起下によるペロブスカイト型量子ドットの発光スペクトル

 

◆ 量子ドット

量子ドットは直径1-10 nm(原子、分子数 10 – 1000)のサイズの超微細構造を有する微粒子で、そのサイズに基づいた特異的な性質を示し、物質の分子状態としての挙動とバルクとしての挙動の中間の状態の挙動を示すという点で非常に興味深い材料です。エネルギー準位、バンドギャップ、伝導帯、 価電子帯といった概念は、通常のバルクサイズの半導体の概念がそのままあてはまりますが、一つ大きな違いがあります。バルク状態では、半導体結晶の粒径は、ボーア半径よりも大幅に大きくなり、励起子は自然限界にまで及びます。しかし、 半導体結晶が小さくなると、物質のボーア半径のサイズにまで近づき、電子エネルギー準位はもはや連続ではなくなり、離れ離れになって行き、つまりエネルギー準位同士の間に小さな分離が生じます。この分離したエネルギー準位の状態は、量子封じ込めと呼ばれ、この状態では、半導体物質はバルクではなくなり量子ドットと呼ばれる状態になります。