プレスリリース

冨士色素株式会社が全固体型アルミニウム空気二次電池を開発

2019.07.16

兵庫県川西市に本社を置く中小化学メーカー企業である冨士色素株式会社の代表取締役社長である森 良平博士は、電解質にイオン液体類似の深共晶溶剤系の電解液を用いたアルミニウム-空気電池を実現しました。さらにこれらの電解液に最適な添加剤を複合化させることにより、全固体型のアルミニウム空気二次電池を作ることにも成功しました。

■ポイント

1. アルミニウム空気電池は理論的にはリチウムイオン電池の30 – 40倍の電池容量を持っています。(リチウムイオン電池:150 – 250 Wh/Kg、アルミニウム-空気電池:8100 Wh/Kg)

2. アルミニウムは地球上で最も多くリサイクルされている金属で、さらに地殻中にも資源的に豊富に存在しており安価になりえます。

3. リチウムと違ってアルミニウムは空気中でも安定で、化学的にも安定で毒性もなく、危険な電解液などの不安定な物質は一切使用せず全ての構成材料が安全なので空気中で安定に作動し、リチウムイオン電池などのように爆発や燃焼したりする心配がありません。

4. イオン液体系の電解質を用いているので、300度ぐらいまでの高温でも使用が可能な電池となります。

5. 深共晶溶媒系の電解質をベースとして、最適な添加剤を用いることにより電解質を固体化して全固体型のアルミニウム空気二次電池を作ることに成功しました。

■開発の社会的背景

近年、昔に比べて夏は異常に暑くなり、甚大な被害をもたらす極端に大きなエネルギーを持つ台風、ハリケーンやサイクロンが発生するなど異常気象などを含めた地球温暖化が顕著になってきています。森林の消滅、砂漠化、生物種の絶滅などこれらの環境破壊、地球温暖化の主な原因は人口爆発やメタン、CO2など温暖化ガスの急増と言われています。ゆえに今後はエネルギーを石油などの化石燃料に依存することが難しく、現在主流のハイブリッドカーを含め、電気自動車や、風力や太陽光発電などのクリーンエネルギー用の蓄電池の開発に世界中の企業、大学、研究機関が開発生産に乗り出しています。しかしながら今後の電気自動車、スマートグリッドの需要に対応していくにはどうしても蓄電池のさらなる大容量化が必要となっており、現行のリチウムイオン電池と比較して、より高い電池容量を持つ革新的な二次電池の開発が強く望まれています。

冨士色素株式会社の森良平博士は金属-空気電池の中でも最も材料として安全で扱いやすく、安価で資源の面からも安心なアルミニウムに注目して研究を鋭意進めてきました。他の二次電池の金属材料とされる亜鉛、マグネシウム、ナトリウム、リチウムと比較しても本件で使用しているアルミニウムは何と言っても安価であり、最も地球上でリサイクルされている金属であり資源量の観点からも安心です。また、アルミニウム-空気電池の理論容量は8100 Wh/Kgであり、現行のリチウムイオン電池に対して飛躍的に電池容量を増加させることができる可能性を有しています。
冨士色素株式会社はこれまで水溶液系の電解液を用いた検討、そしてイオン液体系の電解液を用いてのアルミニウム空気電池の二次電池化に成功しており、さらに空気極に窒化チタン、炭化チタンなどを用いることにより酸化アルミニウムや水酸化アルミニウムなどの副生成物を抑制することにも成功しています。

■研究の内容

本研究においては負極にアルミニウム、空気極に炭素系、チタン系などの材料を用いました。さらに電解質にイオン液体類似の深共晶溶媒を用いて、かつ最適な添加剤を複合化させることにより電解質を固体化して、全固体型のアルミニウム空気二次電池を作ることに成功しました。これにより、製造しやすく、より長期間において安定なアルミニウム空気二次電池を実用化できる可能性が高まりました。

一方で、この全固体型のアルミニウム空気二次電池は電極と固体電解質の接触抵抗、電解質のバルク抵抗などに起因する電池の内部抵抗そのものの高さが原因で電池容量は大きくなく、現時点ではイオン液体系の液体の電解液を用いたアルミニウム空気二次電池の電池容量の方が大きくなっています。冨士色素株式会社はこちらの系も検討を進めており、電池容量を高くすることに成功し始めています。イオン液体系の電解液、空気極の材料、構造最適化などの検討を継続してきており、現時点において、アルミニウム負極の重量に対してとすれば、通常の室温、大気下において700 mAh / g以上の電池容量が確認されています。 ただ冨士色素株式会社は化学会社であり、これまで本格的な電池製造の経験、ノウハウはないので、国内外の一部の協力機関と実用化を検討し始めています。今後さらに他企業、他研究機関との連携、実用化に向けての協業も引き続き模索していきます。

また事業化の場合はグループ会社であるGSアライアンス株式会社から事業展開していく可能性も模索し始めています。

これらの成果は2019年8月下旬に、米国、サンディエゴで開催されるアメリカ化学会の年会で発表予定です。(タイトル:Various types of Air Cathode Materials for Metal Air Battery and All Solid-State Rechargeable Al Air Battery)

■用語説明

◆アルミニウム-空気電池

空気アルミニウム電池はあらゆる電池の中で最もエネルギー密度が高い方式の一つであり、実用化されているリチウムイオン電池を大きく上回る高体積エネルギー密度を有する電池です。また資源的にも豊富で安価であり、環境面でも優れているため早急な実用化が期待されています。一方で寿命、起動時間、副産物の除去などの問題であまり広く実用化されておらず一部の軍事用途に限られてしまっています。アルミニウム電池は本来一次電池、つまり充電できない形式であり、負極活物質であるアルミニウムは正極の酸素雰囲気下で反応して酸化アルミニウム、もしくは水酸化アルミニウムとして副生成物として沈殿してしまうと電池はもはや電気を発生しないという問題点がありました。しかしながらイオン液体系の電解液を用いることによりこれらの問題を解決し、二次電池化の可能性が高まってきているとも言われています。

◆イオン液体

イオン液体とは新しい素材として注目されている新材料で、イオンのみで構成された100℃以下で液体の塩とされています。カチオンとアニオンの組み合わせで、無数の様々な物質、物性を作り出すことができるので、デザイナーソルベント、また水、有機溶剤に続く第三の液体ともいわれており、その蒸気圧の低さ、難燃性、導電性、安全性などの特徴をいかして帯電防止剤、電解液、反応溶媒、潤滑剤、難燃物質の溶解剤などとしての用途があります。

◆深共晶溶剤

深共晶溶媒(DES:Deep Eutectic Solvent)とは、「水素結合ドナー性の化合物」と「水素結合アクセプター性の化合物」を混合することでつくる室温で液体になる化合物です。水素結合ドナーとアクセプター化合物はそれぞれが室温において固体であっても、混ぜることで共晶融点降下が起こり、室温において液体状態が作り出せることができます。
イオン液体と類似の特徴を持ち蒸気圧が低く、難燃性であり、熱安定性および電気化学的安定性が高く、難燃性の物質であっても溶解することができるといった特徴を有します。反応溶媒、抽出溶媒、留媒、移動相、電解液などに用いることができます。イオン液体に比べて低コストになり、環境親和性が高く、有毒なものが少ないのも特徴です。理論上は組み合わせだけで任意の物性をもった溶媒を無限に作り出せることになります。